熊倉山登攀行

土曜日(02/11)熊倉山に登ってきた。私はこの山、寺沢からの道(いまは日野コースというらしい)に勝るルートはないと思っている。しかし、ヤマケイのガイドブック『奥秩父・大菩薩』はもう古すぎて使えない。地味な山ならで、人や役所が気ままにいじくっている案配だ。

寺沢から仁田沢・笹平を経て熊倉山1427へ至る道は、尾根を乗っこしたり巻いたりして登り、沢をわたり何回か渡渉し、こびろい台地をとおり水場でのどを潤すコースだった。小中学生の子どもがいたら連れて登り、山登りの楽しさを味あわせるのに最適の山道なのだ。

たしかに熊倉山は雲取山から伸びる長大な長沢背稜の、酉谷山1718からの支稜の上にあるピークであって達成感がいまいちであり、山域も奥武蔵にも奥多摩にもかからず、奥秩父というには玄関(といわれる三峰)の前の前栽のようで、派手やかさのない日陰の女という雰囲気である。

日陰の女にはこまやかな情があるものである。荒川村(いまは秩父市)の役所の人間は山のよさもわからないのだろう。いつのまにか城山コースがメインになって、ただ岩峰をピストンするだけに堕してしまった。国内林業は壊滅したのに林道整備だけは延々と続けるのは、公共事業を継続して山を荒廃させるだけの意味しかない。

日野コースのかつての登山口から入るとすでに廃道になっている。さらに林道を登って新しい日野コースの登山口へ着くと、鉄条網が張ってあって「林道建設で3月末まで閉鎖」とある。

だが4月に再開される保障はない。熊倉山から酉谷山へのルートも刈り払いはもうされていない。山に若者の姿が消え、団塊の連中は有名山に集中する齢になっている。日本の山の前途も暗澹たるものである。

しょうがないから城山コースを択ったが、この岩峰ほとんど氷壁で往生したし、帰途の地獄谷の雪のつき具合も滑落しそうで怖かった。

日野コースこその山のよさである、さて役人に意味がわかるかな?

 
 
 

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